
生成AIで忍者作品を作る
今回初となる試み、生成AIを駆使して作品を作るというのは、チャレンジでもあります。
私の作る作品の技法は「コラージュ」といって、異素材のものをつなぎ合わせて一つの作品を作り上げていきます。
そのためには、まず最初に素材をたくさん集めます。
大体は著作権が切れて二次使用がOKなアンティーク絵画、図録、古書の挿絵、カタログや雑誌で掲載されている写真などを使用しています。
これが集めるのがなかなか大変で。
テーマを決めて作品を作る場合は、素材素材集めに数日費やします。
また、今年立ち上げた日本に着目したアートブランド・じゃぽらーじゅの素材は、浮世絵を多く使用しています。
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浮世絵とは、江戸時代に盛んに描かれた風俗画です。
それまでの美術は「肉筆画」が多く、とても高価だったため庶民の手には届きませんでした。それが浮世絵から始まった「木版画」による印刷技術の進歩よって、たくさんの数が刷られ、多くの市民に好まれ流通していったのです。そのため、当時の浮世絵の立ち位置は前衛的でセンセーショナルなものでした。
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画期的な進化というのは、今も昔も変わらずに起こり続けていますよね。
今回制作する忍者作品は、日本が誇る浮世絵と、最新の技術の生成AI を両方使用するという、面白い試みとなります。
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まず、忍者の風貌について。
私がよく思い浮かぶ忍者は、水戸黄門に出ていた「風車の弥七」や「忍者ハットリくん」のような、濃紺の装束に囲まれて刀を腰に刺している印象です。
皆さんもきっとイメージは近いのではないでしょうか。
色々と調べてみて面白かったのが、江戸時代の浮世絵に描かれている忍者像が現代のイメージと全然違うことです。
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例えば、徳川家康に使えたという、服部半蔵。

こんな風貌でした。
忍者というより武将?(実際に二代目の服部半蔵正成は武将だったそうです)
前回紹介したドラマ「忍びの家」に出てくる俵家は、服部半蔵の末裔という設定になっています。
後ろに服部半蔵の掛け軸が飾られています。
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また伊賀出身の忍者であった、天下の大泥棒・石川五右衛門の浮世絵はこちら。

やはり忍者には見えない風貌。
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こちらは歌川国芳作の「大ガマに乗る天竺徳兵衛」

モデルは江戸の初期にインドに渡った貿易商人の天竺徳兵衛(てんじく‐とくべえ)。
当時、海外を渡った人物はよほど珍しかったのか、歌舞伎や浄瑠璃では、異国話を語る妖術使いとして大胆に脚色して描かれています。
天竺徳兵衛のガマの術は有名で、数々の浮世絵に描かれています。
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こちらも忍者浮世絵。

「仁木弾正忍術図(にきだんじょうにんじゅつのず)」
原田甲斐をモデルにした、鼠に化ける妖術を使う忍者。
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このように浮世絵の忍者像だけでは、現在の忍者のイメージ像とだいぶ違う。
これらをメインで使用してもきっと伝わりにくい。
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そこで、忍者を生成AIで作ってみることにしました。
そこで、忍者を生成AIで作ってみることにしました。
使用するソフトはAdobe Photoshop。
生成AIで作品の素材を作るのは、初の試み。
活用してみたところ、爆笑でした!!!
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まずは、キーワードとなるプロンプトを入力します。
最初に入れたプロンプトは
「忍者が手裏剣を持っている所」
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出てきたのがこちら 笑

さすがアメリカの会社、Adobe!!
AI脳もアメリカナイズされています。
海外から見た日本とはこんな風なのでしょう。
とはいえ、これは忍者ではなく格闘家なのでは??
ツッコミどころ満載です。
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さらにプロンプトを入力
今度は
「日本の忍者、忍び」

椅子から飛び落ちる程の大爆笑!!!
これ誰!!??
クエンティン・タランティーノの映画に出てきそう!!
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笑い泣きをしながら、さらに入力
「黒い服を着て、顔が隠れている忍者」

この赤いアイマスクは本当に売ってるでしょうか。
そして、黒いアイシャドウは顔が隠れていることになるのか??
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もはや作品のことなど忘れて没頭です。
使えば使うほど面白すぎる生成AI、今までにない新感覚です。
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過ぎ去ること数時間
「黒い服を着て、顔が隠れている忍者、全体像、夜に屋根を歩いている」

お??これはだいぶ近くなってきたのでは??
でも、もう少し細部の表現までいきたいところ
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さらに
「黒い服を着て、顔が隠れている忍者、全体像、夜に屋根を歩いている 顔が見える、日本人、浮世絵風に」

大分良い感じに!!!
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さらには、ここで画像認証機能を使ってみることに。
こちらの浮世絵の画像を入れて

プロンプトを「浮世絵の忍者」と入力

おお、雰囲気がガラリと変わる!!
でも忍者というよりも桃太郎なのでは??
アメリカ産まれによる忍者像がなんとも斬新で面白い。
これ、日本人は絶対に想像しないビジュアルですよね。
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さらに
「浮世絵の忍者 東京の街を飛び回っている 5人」

三丁目の夕日のようなほのぼのとした絵面に。なぜか忍者が皆笑顔という!
そして生成AIは、漢字が苦手と聞いていたけれど、まさにですね。
日本語とアラビア文字を入り交ぜたような不思議な字体になっています。
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さらには、ネットからお借りした三重観光さんの忍者のイメージ写真を

画像認証してみると

躍動感が一気に出ました!!
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アメリカ生まれ育ちの夫とのカルチャーギャップを、ゆっくり丁寧に縮めていく感覚です。
国際結婚ってこんな感じなのかしら。
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さらに突き詰めていくと。。。

イメージにとても近くなりました!
胴体はこんな感じで完成かなと。
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さて、AI画像の次は浮世絵探しです。
今回は歌川国芳の作品で行くことにしました。

江戸時代後期に活躍した浮世絵師、歌川国芳。
「武者絵の国芳」と言われ、古今東西の歴史・物語に登場する数々のヒーローたちを描き人気を得ます。
浮世絵の作風を見てみると、後期になればなるほど、奇想天外な作風が増えていき、国芳もその1人。
躍動感ある戦闘シーンは今見ても迫力があります。

今回の忍者作品に国芳の作風はぴったりです。
ちなみに、前半で紹介した浮世絵「大ガマに乗る天竺徳兵衛」と「仁木弾正忍術図」も国芳の作品です。
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また、何よりも部類の猫好きだった国芳。

武者絵以外にも猫を題材とした作品も有名です。
今回は使わなかった代わりに、忍者の設定は実写の猫にすること。
猫の顔はiStockから購入。目力があり真の強そうな顔を選びました。
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完成した作品がこちら。

草木も眠る丑三つ時、京の夜は化け物たちに支配されている物騒な世界に、、。
そんな世の中を救おうと、三人(匹?)の猫忍者たちが化け物退治に立ち向かっていきます!
戦火を潜りに蹴ながら負けじと妖術を使い、颯爽と立ち向かっていくのです。
石川五右衛門も加勢しようとやってきて、閻魔大王も戦闘を見届けに地獄からやってきました。
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異素材のものを組み合わせて一枚の作品を作っていく。
これがコラージュの面白いところで、病みつきとなる所以です。
現代版の奇想天外さが、よく表現できたと思います。
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日本が誇る伝統美術である浮世絵と、生成AIを駆使した忍者をコラージュした今回の作品。
カモコラージュ(ジャポラージュ)らしいユーモアも溢れていて、とても面白い作品に仕上がりました。
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笑いが収まらないと同時に、アメリカ生まれのの素敵な相棒ができたような、Adobeの生成AI。
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どんなものにも魂は宿る。
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一緒に作成している感覚で楽しかったです。
これからの作品作りが楽しみです。